亡き夫がまだ元気だった頃、一緒にホームセンターに行き、二人で選んで購入した無花果の木がある。
鉢植えで購入したその年は、たしか3つか4つ実が付いて、自宅で採れた初めての果実に二人で喜んだ。
翌年別居することになり私が家を出る間際、夫がひとこと
「無花果は持って行けへんのか。」
と言った。
怒っていた私は
「もう いらん!」
と捨て台詞をして、無花果の鉢植えを置いて家を出た。
別居して数か月経ったある日、三男が
「お母さん、玄関のポストの上にこんなん置いてあったで。」
と言って、ビニール袋に入った何かを持ってきた。
一体何!?
と思って開けてみると、小さな無花果の実が3つ。
あの時の気持ちはとても複雑で、今になってもどう表せば良いのかわからない。
嬉しさと、悲しさと…。
ただ、夫には何も連絡はしなかった。
夫からも何も言ってこなかった。
家を出てから約1年経って再び夫の元へ戻り、夫が入院中には25個の実がとれた。
「今年は25個も実が出来たよ!」
とLINEで報告すると
「それは上出来!」
と夫も喜んでいた。
それが何故か夫が亡くなったその年には実がひとつもならなかった。
去年も一昨年も一生懸命お世話しているにも関わらず、たったひとつの実もならない。
どうしてかな、夫が実のならない無花果にして逝ってしまったのかと思うほど、成長はするものの実が出来る気配もない。
色々調べてもわからない。
どんなにお世話しても実の生らない無花果に毎年がっかりするのも疲れてきて、庭のある現在の家に引っ越した時、庭の片隅に植え替えた。
半ば諦めて地植えにしたのだ。
もう、生えてりゃいいわ、くらいの気持ちで。
それが今年はメキメキと成長して数えきれないほどの実をつけた!
地植えにしたからだとは思うものの、何となく夫からのプレゼントのような気がした。
黙ってポストの上に置いていった無花果のように…。
書き終えてから、あまりのロマンチストぶりに自分で恥ずかしくなったが、これはこれで良しとする(笑)
因みに我が家の無花果の品種は、ありきたりなドーフィンです。
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