もうすぐ還暦になる。
過ぎてしまえばあっという間の60年。
振り返ってみれば、ほんとにアホだった私。
未だにアホだ。
頭の中が中学生のまま、いや、小学生かも、、いやいや今どきの小学生の方がもっと賢いわ。
中学3年で家出をして、3度結婚して3度離婚した。
息子を3人産んだ。
子供たちにだけは悲しい思いをさせまいと、無我夢中で働いてきた。
生活の為にいろんな仕事をした。
ちょっと人には言えない仕事もした。
でもちょっと人に誇れる仕事もした。
本当は愛していたし、別れたくもなかった3度目の夫。
浮気性でどうにも我慢できず、泣きながら離婚届を区役所に提出してから3か月ほど過ぎたある日の夜、青ざめた顔をして(元)夫が突然私を訪ねてきた。
「どうしたん?まさか病気!?」
「肺癌が見つかってん…明日詳しい検査結果を聞きに行くねん。」
「わかった、一緒に行く。」
そりゃ大変だ!と言いながら、これで少しは心を入れ替えて良い夫になってくれるだろうかと、不謹慎にもどこかで喜んでいる自分がいた。
暫く頑張れば良くなるだろうと楽観的に考えていたのだ。
すぐに引っ越しの手配をし、再び一緒に暮らし始めた。
が…診断が下されてから たったの10か月。
たったの66歳で…
私を残して彼は逝ってしまった。
泣いても泣いても 泣いても泣いても、涙は枯れなかった。
たとえ別々の人生を歩もうとも、生きていて欲しかった。
暗闇の中に、ひとり投げ出されたような日々。
残された私の許へ、独立していた息子たちがひとり、またひとり、と何も言わず帰って来た。
「また一緒に暮らす?」
「うん、そうしよか」
「じゃあもう少し広い家にみんなで一緒に引っ越そう」
コロナと看病で仕事を辞めていた私の事を思い、息子達が家賃や光熱費をみんなで出し合う事にしてくれて、2021年の春、築68年の古~い、でも広~い貸家に引っ越しをした。
新しい仕事も見つかり、週に4日だけ働くことにした。
家族4人の新しい暮らしが始まって、今日で1年と16日。
築68年の古家で迎えた初めての冬は すきま風が吹き荒び、とてつもなく寒かった。
でも大人になった息子たちと暮らしはじめた心の中は平穏で、とてつもなく温かかった。
そして2022年の春が来た。
なんとなく…なんとなく私の心にも遅い春が来たようだ。
質素で平凡な暮らしだけれど、残された人生の、日々を慈しみながら老いてゆきたい…。