夫が亡くなってからずっと、私は歌を聴くことが出来なくなっていた。
続けざまに父も亡くなり、益々私は歌を遠ざけた。
夫も、そして父も、歌が大好きな人だった。
三人でカラオケで歌った事も数多くあったし、歌には思い出がいっぱい詰まっていて辛すぎるのだ。
一緒に唄った歌、一緒に聴いた歌、二人が好きだった歌、チークダンスを踊った歌や、喧嘩をして悲しかった時、独りで聴いて泣いた歌…。
当時の曲が流れると、夫や父との思い出がフラッシュバックして、どうにもこうにも泣けてくるのだ。
家事をしていても買い物をしていても、仕事中でも涙が溢れてくるので、私は私の周りから一切の音楽を封印した。
二年の月日が経った今日、ふと思い立ち久しぶりに聞いてみた。
中島みゆきさんの『慕情』。
胸がギューッとなったけど、泣かずに聴けた。
そして『時代』。
前を向いて歩こう、と思えた。
悲しみに浸っていてもどうにもならない。
また生まれ変わって出会えることを信じて、顔をあげて歩こうと思った。
もう大丈夫。
これからは封印を解いて歌を聴き、また唄い、残された人生を明るく生きてゆこうと思う。
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